Online edition:ISSN 2758-089X
全脳虚血血流再開後における脳および脳脊髄液の酸塩基平衡障害
成犬7頭に全脳虚血(total cerebral ischemia : TCI)を作成し,虚血中および脳血流再開後にみられる動脈血,脳,脳脊髄液(cerebrospinal fluid : CSF)の酸塩基平衡障害をISFETセンサーを用いて検討した.センサーはpH, PC02を連続的に測定するために大脳槽(cisterna magna)および脳実質内に留置された.またA-Oバルーンカテーテル法により10分間のTCIと,その後の再循環が作成された.この検討により以下の結果を得た.(1)動脈血では,血流再開後pHの低下,PC02の上昇がみられ,その後control値へ回復する傾向を示したものの,pHは血流再開120分後においても低値を示した.(2)脳では, TCIによりpHの低下とPCO2の上昇を認めたが,脳血流再開120分後, PH, PCO2ともcontrol値近くまで回復した.(3) CSFでは, TCIによりpHの低下を認め,血流再開後も回復傾向を示さなかった.またTCIによりPCO2の上昇を認め,血流再開直後に回復傾向を示すものの血流再開120分後においてもcontrol値より高値であり, CSFのアシドシースは呼吸性および代謝性因子の両者により生じていることがうかがえた.以上の結果より,全脳虚血血流再開後ではCSFにおけるpH, PC02の異常が著明であり,血流再開後120分でもCSFのアシドーシスは回復する傾向がみられなかった.これらのことより蘇生時および蘇生直後におけるCSFアシドーシスの改善は,脳蘇生を図る上で極めて重要であると思われた.(昭和63年2月24日採用)
- 著者名
- 高須 伸克
- 巻
- 14
- 号
- 3
- 頁
- 336-346
- DOI
- 10.11482/KMJ-J14(3)336