h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

Passive Arthus Reaction における皮膚内Immune Complexの形成と分布 ―抗原・抗体の種類と量比による影響―

passive Arthus reaction のimmune complex (IC)の形成と分布に及ぼす,抗原・ 抗体の量の影響について2種類の抗原で検討した. passive Arthus reactionはモルモッ トの皮膚で,抗原を皮内注射し,抗体を静注することにより惹起された.抗原はhorseradish peroxidase (HRP. MW 40,000)とbovine serum albumin (BSA. MW 67,000) を,抗体はそれぞれ抗HRPウサギlgGと抗BSAウサギlgGを用いた. passive Arthus reactionの惹起1時間後に,抗原を皮内注射した足底皮膚を生検し,凍結連続切片 を作製した.抗原であるHRPはGraham-Karnovsky法のdiaminobenzidine反応 (DAB反応)で,抗体と補体は螢光抗体法で証明した.これら抗原・抗体・補体はICを 形成すると顆粒状の沈着物として認められる.顆粒状の沈着物は,真皮の毛細血管や細 静脈の血管壁とdermo-epidermal junction (D-EJ)に認められた.5 mg, 3 mg, 1 mg の3段階の抗体量で, 100μg, 25μg,5μg,1μgの4段階の抗原量について検討した.そ の結果,抗原がHRPでもBSAでも,抗体量が5mgで,抗原量が100μgか25μgで あれば常にICの形成が観察された.抗原量や抗体量を減量していくと,ICの沈着は減少 し, DE Jには認められなくなった.分子量のより小さいHRPは, BSAよりも少ない抗 体量でもICの形成がみられた.抗原・抗体・補体はICを形成していても,必ずしも同時 には検出されなかった. passive Arthus reaction の反応惹起1時間後,肉眼的にはほ とんど変化が認められなくても,顕微鏡的にICの存在が確認された.また,ICの沈着 と炎症についてhematoxylin-eosin (H-E)染色を行って検討したが,ICの沈着とICに よる炎症の程度に相関は認められなかった.(昭和63年9月8日採用)
著者名
和田 民子
14
4
608-616
DOI
10.11482/KMJ-J14(4)608

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