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Online edition:ISSN 2758-089X

髄核由来炎症反応におけるビタミンE のNO 産生抑制効果

腰椎椎椎間板ヘルニア(LDH)の疼痛発生機序には,機械的圧迫因子と化学的因子の関与が挙げられる.機械的圧迫因子に関しては,前方圧迫要素,後方圧迫要素,不安定性の三つの組み合わせが考えられる.化学的因子に関しては一酸化窒素(NO),炎症性サイトカインなどの関与が示されており,これらの中でNO はLDH による神経障害性疼痛の一因となっているという報告がある. 一方,強力な抗酸化剤として注目されているビタミンE にはその直接的作用である抗酸化作用とは別に抗炎症作用があり,炎症の場でスーパーオキサイド(O2-),プロスタグランジンE(2 PGE2),サイトカインを調整し,NO 産生を阻害することが報告されている. 今回われわれは,LDH による炎症の場においてビタミンE がNO の発生を抑制し,神経障害性疼痛の発生の防止に有効であるという仮説を立てた. 本研究の目的は髄核・マクロファージ共培養モデルを用いて,ビタミンE 添加によるNO の発生抑制効果を検討することである. 実験には生後12週齢のSprague Dawley ラット(雄)97匹を用いた.ラットの髄核細胞と炎症性マクロファージの共培養をビタミンE 添加群と無添加群とで分けて行い,培養開始2時間後,1週間後の培養液中のNO 値を測定し比較検討を行った. その結果,共培養開始から2時間後と比較して全ての群において1週間後のNO 値が有意に上昇した.そしてビタミンE 添加群では無添加群と比較して有意にNO 値が低値であった.以上から,ラットを用いた髄核細胞とマクロファージの共培養によって炎症のメディエーターであるNO値が上昇し,それはビタミンE 添加群において抑制された. この結果からビタミンE が抗炎症作用によってLDH の神経障害性疼痛の一因であるNO の発生を抑制することができ,新たな治療戦略となる可能性が示唆された.doi:10.11482/KMJ-J41(1)1 (平成26年10月9日受理)
著者名
牧山 公彦
41
1
1-7
DOI

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