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Online edition:ISSN 2758-089X

上腹部不定愁訴(機能性ディスペプシア:FD)の現況と,その漢方治療

 腹部不定愁訴患者は,近年,機能性ディスペプシア(functional dyspepsia: FD)と呼ばれるようになった.FD の病態には消化管運動異常,内臓知覚過敏,酸分泌異常,精神的因子などが関与しているため,治療には消化管運動改善薬,酸分泌抑制薬,抗うつ薬などが用いられることが多いが,治療に難渋する例も多い.一方,本邦ではFD に対しては漢方治療も古くから広く行われており,適切な証(症状や所見)の患者に使用すれば,著明な効果を発揮する.多因子疾患に“合剤”を用いる治療法は,高血圧でも見られるようになったが,複数の効果を持つ生薬の“合剤”である漢方方剤はそれを先取りしていたと言える.大きな欠点であったエビデンスの少なさは解消されつつあり,漢方治療は西洋薬が不得意とする分野をカバーする治療法として,今後さらに注目されると思われる.(平成23年6月23日受理)
著者名
楠 裕明,他
37
3
97-106
DOI
10.11482/Kawasaki_Igakkaishi37-3.097-106.2011.pdf

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