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霊長類の足の動脈系の研究 -特異な走行を示すロリス科四肢の動脈系の立体解析-

原猿類ロリス科(Prosimii, Lorisidae)四肢にみられる特異な動脈形態を示す動脈管束arterial bundle (血管網,または怪網rete mirabile)を動脈造影写真により立体的解析し系統発生学的観点より検討し,ヒトを含めた霊長類の四肢の動脈系の形態についての新しい系統発生学的知見が得られた.原猿類において前腕では尺骨動脈,下腿では伏在動脈が主幹動脈である.上肢では上腕動脈管束の大部分が橈骨動脈管束となり筋枝を出しながら末梢へ続くがその終枝は正中動脈で尺骨動脈と浅掌動脈弓を形成する.下肢では伏在動脈の存在により膝窩動脈由来の前脛骨動脈,後脛骨動脈,腓骨動脈の発達は悪い.ヒトの上肢において最も多くの浅上腕動脈の存在に関する破格の報告の大部分が前腕および手の橈側に認められ,その領域が原猿類の動脈管束に由来する部位に相当する.真猿類においても浅上腕動脈の消失,橈骨動脈の平行的に発達する相互関係より考え,原猿類にみられるrete mirabile が ヒトの上肢の破格と系統発生学的に密接な関係があるものと思われた.ヒトの下肢にみられる破格の報告のうち下腿および足における破格の例が比較的多い.これら破格は霊長類でみられる伏在動脈と膝窩動脈由来の動脈の発達の相互関係に起因するものと思われ,その発達の推移の過程は著者の先の報告によっても明らかである.
著者名
三宅 信一郎
13
1
14-29
DOI
10.11482/KMJ-J13(1)14

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