h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

赤血球膜異常症における膜蛋白の病態に関する研究 ―特に遺伝性楕円赤血球症について―

遺伝性楕円赤血球症25例(HE),遺伝性球状赤血球症5例(HS)および遺伝性有口赤血球症5例(H. St.)における溶血の病因について,それらのspectrinの生化学的性状,膜機能および細胞形態の立場から検討した.HE症例では,その細胞形態によって2群に分類された,第1はrod shape type(rod型細胞が15%以下の群),第2はnon-rod type (rod型細胞が5%以下の群)で,前者は16例,後者は9例であった.溶血型の多くはnon-rod typeであった.さらに典型的な溶血型では,その楕円赤血球にstomatocytic change が加わっていた.一方,膜機能Nainfluxから溶血型をみると9例中8例に, Na-influxの亢進が認められた.rod型細胞を遠心法により集め,そのrod型細胞のcell age とNa-influxについて検討した.結果はrod型細胞は, ovalocyteおよびdiscocyteよりさらにageingの進行した細胞と考えられた.また, Na-influxに関しては何ら正常赤血球と有意な差を示さなかった.しかし,このrod型細胞より作られたTriton shell では,明らかにmechanicalstabilityの低下が認められた.溶血型HE症例のうちで,膜蛋白band 4.2欠損例が発見され,この症例ではspectrinα-IV domainの等電点にも異常が検出された.その他のHE, HSおよびH.St.症例におけるspectrinの検討では,各domain, dimer-dimer association および耐熱安定性には異常を認めなかった.
著者名
神崎 暁郎
13
1
44-61
DOI
10.11482/KMJ-J13(1)44

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