h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

臨床的に悪性経過をとる髄膜腫の各種組織マーカー検索を中心とする免疫組織学的研究

髄膜腫の多くは良性腫瘍であるが,まれに悪性の臨床経過をとるものがあり,かかる悪性型のものを通常の良性型のものと鑑別する組織学的およびその他の方法が未だ見出されていない.そこで本研究は,臨床的に悪性経過をとる髄膜腫を良性型から組織学的および 組織化学的に鑑別することを目的として,組織学的検索と酵素抗体法による各種組織マーカー検索の組合せにより検討した. 検索した臨床的な悪性髄膜腫症例(以下,悪性群)は完全切除後の局所再発(7例),局所再発+頭蓋外侵襲(2例),局所再発+遠隔転移(2例)および術前の頭蓋外侵襲(2例)の計13例で,良性髄膜腫症例(以下,良性群)としては術後5年間以上再発・転移のない13例を用いた. 組織型別にみると,悪性群には組織学的malignant type 2例と悪性傾向が強いとされるangioblastic type 2例を含むが,他は全て良性群のものと同一であった.しかし,Mitotic index(/10 HPF, 以下MI)は悪性群は平均17.7に対し,良性群は平均0.7と有意差(p<0.01)がみられた.PAP法・ABC法による組織マーカーの検索はkeratin, S-100 protein, desmin, fibro nectin, actin, GFAP, Vimentinの存在と9種類のレクチン(Con-A,DBA,LCA,PHA,PNA, SBA, SJA, UEA-I, WGA)の結合性について行ったが,両群とも髄膜腫細胞自体はpeanut agglutinin(PNA)とsoybean agglutinin(SBA)のみが陽性で,また腫瘍間質内小血管の内皮細胞がulex europaeus agglutinin l (UEA-I)のみで陽性であった. PNA・SBA結合性は両群症例間で陽性率に有意差はなかったが, MI10未満とMI10 以上の二群に分けて陽性症例率を比較すると,前者で48%・25%に対し,後者はそれぞれO%であった. UEA-I陽性の間質血管の出現率は,良性群平均56.5%に比し悪性群では平均7.9%と有意(ρ<0.05)に低下していた. neuraminidase前処理にて,悪性群症例の23%のみで腫瘍細胞のPNA結合率の増加がみられた.以上の結果より,M1 10以上でPNA ・ SBA・UEA-I のレクチン結合率が低く,またneuraminidase前処理にて細胞のPNA結合率が増加する髄膜腫は,臨床的に悪性経過をとる傾向があると推定した.
著者名
松浦 秀和
12
1
18-32
DOI
10.11482/KMJ-J12(1)18

b_download