h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

乳腺fibrous disease -乳腺症から分離させ得る疾患単位か?-

Fibrous disease of the breast が,広汎な概念を持ついわゆる乳腺症から独立させ得る疾患か否かを調べる目的で,当病院病理部で過去10年間に診断された乳腺症例98例を集めて検討した.98例中4例は,組織学的に,(1)線維化,硝子化した基質の増生, (2)小葉の萎縮がみられ, fibrous disease に一致する所見を呈していた.臨床病理学的に,これらの症例は, (1)比較的若い女性に多い, (2)左乳腺,しかも上内側に好発する, (3)妊娠や出産回数の少ない者に好発する,(4)病巣は比較的硬い腫瘤を形成する, (5)組織学的に 萎縮腺管周囲に慢性炎症細胞浸潤をみることから,いわゆる乳腺症とは異なっていた.これらの結果から, fibrous disease は,臨床的,病理学的に乳腺症から独立させ得る疾患であると推測された.ただ,最終的な結論をつけるためには,さらに症例を集めて検討する必要があろう.
著者名
森谷 卓也,他
12
1
59-66
DOI
10.11482/KMJ-J12(1)59

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