h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

ヒト病的甲状腺組織におけるα-naphthyl acetate esterase 活性 ―特にzymogram分析について―

甲状腺濾胞上皮細胞のagarose等電点分画泳動を行い, lysosomal enzyme のうちの一つとしてよく知られているα-naphthyl acetate esterase (ANA-esterase)の酵素電気泳動像(zymogram)から,ヒト正常および病的甲状腺組織を比較検討した.1.正常ならびに病的甲状腺のいずれにおいても,pI 5.5~8.0領域に11本のbandが検出され,pI 6.2以下の2 band を除く個々のbandの活性強度は各疾患により異なった.2.正常甲状腺および機能正常の腺腫様甲状腺腫のzymogramはdensitometric scanningにより釣鐘状のpatternをしめした.3.バセドウ病,過機能性腺腫様甲状腺腫および濾胞腺腫のzymogramはband III からXまで全体的に酵素活性が高く台形に近いpatternをしめした. 4.先天性甲状腺ホルモン合成障害および悪性リンパ腫では各bandがわずかに認められる程度の伏せ皿状のpatternをしめした.5.甲状腺癌および橋本病ではpI 7.4~7.8のband X の活性が特異的に高いpatternをしめした.癌では二次元電気泳動での分子量約190Kのspotがband X の活性を特異的に高くした原因と考えられ,組織型による差は認められなかった.
著者名
岡村 泰彦
12
1
81-93
DOI
10.11482/KMJ-J12(1)81

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