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Online edition:ISSN 2758-089X

糸球体障害におけるFibronectinの意義に関する検討 ―第1報 Mitomycin C 腎障害と糸球体Fibronectin

Mitomycin C (MMC)投与による腎糸球体障害では内皮側障害が推測されるが,その病理発生機序には不明の点が多い.一方,糸球体基底膜と内皮細胞との接着にはfibronectin (FN)の関与が想定されている.そこでラットにMMCを投与しその腎糸球体障害の発現 におけるFNの分布について実験的に検討した.ラットにMMCを0.5mg/kgを3日間連続して尾静脈より注射し3日から5日後に屠殺した.腎組織は光顕ではほとんど変化を認めなかった.しかし,電顕においては糸球体内皮細胞の類壊死を認め,また内皮下腔は拡大しており電子密度の低い物質で充満していた.糸球体近傍の小血管内皮細胞にも同様の変化が観察された.FNは対照に較べ係蹄壁に増加していた.しかし, fibrinogenの沈着を伴ったFNの増加は50%のみに認めた. Polyethyleneimine 静注法による基底膜の陰性荷電物質は減少していなかった.これらのことより, MMC腎障害は全身の血管内皮障害の一部分現象であり,FNの係蹄壁への増加を伴っていた.増加したFNは内皮細胞の壊死の結果であると考えた.
著者名
米田 昌道
12
1
100-109
DOI
10.11482/KMJ-J12(1)100

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