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Online edition:ISSN 2758-089X

マウス胎子および新生子肝臓における肝内胆道の免疫組織化学的観察ならびに超微形態学的観察

 胎子期から新生子期のマウス肝臓で免疫組織学ならびに超微形態観察を行い,肝臓造血終息期における造血系死細胞処理と肝内胆道系との関係を検討した.毛細胆管は径約1μm で内腔に微絨毛を持った細管として胎生14日に隣接する肝細胞間に形成される.胎生後期から生後早期の肝臓では,毛細胆管においてその径が1.5倍から3倍に拡張するのがしばしば観察される.生後早期の肝細胞は造血系細胞要素を食作用で取り込み,径3~5μm の大型封入体を形成し,その内に空胞状膜構造やミエリン像が含まれる.二次ライソゾームである大型封入体は最終的に毛細胆管壁と融合し,それによって毛細胆管が拡張,封入体の内容物が毛細胆管腔へと放出される.拡張毛細胆管壁で大型封入体に由来する部分は微絨毛を欠き,毛細胆管腔壁の微絨毛の分布に局在が生じる.出生直後から生後早期の肝臓において,造血系細胞は小葉間結合組織内で,特に小葉間胆管に隣接して残存し,小葉間結合組織内の造血細胞集団にはTUNEL 陽性の細胞が出現する.また,TUNEL 陽性封入体は小葉間胆管上皮細胞中にも観察される.小葉間結合組織内の造血細胞集団は成熟好中球および赤芽球で構成され,好中球の中には細胞死の徴候を呈するものも含まれる.胆管上皮細胞は,細胞死に至った好中球,赤芽球および脱核赤芽球核を貪食し,TUNEL 陽性封入体を形成する.骨髄造血の発達に伴い造血細胞は肝臓内より急速に消失する.その際通常は活発な食作用を示さない肝細胞や胆管上皮細胞が造血系死細胞の処理に加わる事が明らかとなり,毛細胆管をはじめとする肝内胆道が造血系死細胞の処理・排泄経路として生後早期に機能することが示された.(平成23年3月2日受理)
著者名
熊野 一郎
37
1
29-42
DOI

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