h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

腎血管筋脂肪腫の一例

腎血管筋脂肪腫は, Bourneville-Pringle母斑症に合併することの多い良性腫瘍としてよく知られているが,最近, Bourneville-Pringle母斑症に合併していない単独型の腎血管筋脂肪腫の報告が増加している.しかし,単独型の腎血管筋脂肪腫の場合,その術前診断は困難である.著者らは,35歳女性にみられた単独型の腎血管筋脂肪腫を報告する.患者は, 1980年9月に嘔吐,左下腹部痛を主訴として,川崎医科大学附属病院に入院した.理学所見では,左腹部に大きな腫瘤を認めた.腹部単純写真にては,左腹部に,レ線透過性のある大きな腫瘤を認め,経静脈的腎盂造影にては,左腎杯は変形し,正面像では正中線上へ,側面像では腹側に偏位していた.選択的左腎動脈造影にては,蛇行した異常新生血管,ぶどうの房状の造影剤貯留,動脈瘤およびレ線透過性のある部がみとめられた.CTにては,左腎腫蕩が低吸収性病変として描出された.術前に左腎血管筋脂肪腫と診断し,左腎摘出術を施行した.組織学的検査にて,腎血管筋脂肪腫と確認された. 1985年11月に同部に腫瘤を認め再入院し,腫瘤は外科的に切除された.組織学的検査では,血管筋脂肪腫と診断され,腫瘍はリンパ節内で増殖していた.種々のレ線検査,中でもCTおよび血管造影は,腎血管筋脂肪腫の診断に有用である. また,本症では,注意深い経過観察が重要である.
著者名
星加 和徳,他
12
3
264-270
DOI
10.11482/KMJ-J12(3)264

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