Online edition:ISSN 2758-089X
正常ヒト甲状腺の免疫化学的解析 ―特にthyroid albumin について―
正常ヒト甲状腺中のヨード蛋白を,等電点分画と免疫化学的,免疫組織化学的,物理化学的手技を用いて分析した.その結果,次のような結論を得た.1)甲状腺中のalbumin様蛋白の等電点(pl)値は4.80から5.21であった.この値はserum albumin (SA)の4.85から6.16と比べ異なっていた.また甲状腺可溶性分画中のT3の等電点はalbumin様蛋白と一致した.2)免疫拡散実験の結果,T3とalbumin様蛋白は結合しているという知見を得,いわゆるthyroid albumin (TA)と呼ばれているものであると判明した.3)これら両albuminのアミノ酸分析を行い,明らかな差を認めた.4)freeのT3のpl値については,直接測定は困難なのでRIAを用いて算出したところ,約5.32でありTAのそれとは異なっていた.5)thyroglobulin(TG)は現在までいわれているpl値約4.5より幅広い等電点値をとる事がわかった(p1 4.40から5.82).6)免疫組織化学的分析ではTA, T3, TGは甲状腺濾胞上皮に限局しており,コロイドには陰性であった.
- 著者名
- 川野 亮
- 巻
- 11
- 号
- 1
- 頁
- 22-35
- DOI
- 10.11482/KMJ-J11(1)22