Online edition:ISSN 2758-089X
乳癌根治術後の上肢運動障害に対するリハビリテーション(続編) ―徒手筋力テスト,日常生活動作を中心として―
1.術後の患側肩関節機能障害は a.可動域障害:頻度では側方挙上,水平位外転が100%,前方掌上98.6%,水平位内転87.0%,後方掌上81.2%と高率,内旋は低率(34.8%).障害度は水平位外転が86.0%の程度に著しく,側方掌上51.7%,前方挙上40.0%で,内旋は9.0%と軽度. b.筋力障害:全例障害され,障害度は,外旋,側方挙上,水平位内転,前方挙上の順に軽度で,後方挙上が最も軽度. c.日常生活動作(ADL):全例障害.障害度は,“ふとんの上げ下げ”が83.6%と著しく,“棚の上のものの上げ下げ”と“洗濯物を干す”が62.3%の順にみられた. 2.術式別の肩関節機能障害は a.可動域障害:縮小手術では内旋が,頻度および程度とも低い.定型的根治術は拡大根治術と類似するが,後方挙上,内旋,外旋の障害が軽い. b. 徒手筋力テスト(MMT)からは,縮小手術が全項目についてGrade 3 が少ない(軽度).定型的根治術と拡大根治術は側方挙上,外旋障害を除き,他は拡大根治術の障害が著しい. c.ADLは縮小手術が“ふとんの上げ下げ”を除き,障害は最も軽度で,次いで定型的根治術,拡大根治術と順に障害の頻度・程度は高く,著しい. 3.リハビリテーションによる回復訓練の十分な61例の回復期間は a.可動域:5ヵ月以内に87%の回復がみられる.縮小手術は2ヵ月,続いて定型的根治術は3ヵ月にピークを示し,完全回復は5ヵ月であった.拡大根治術は3ヵ月から始めて回復し,7ヵ月の間に分布し,遅延した. b.筋力:70%以上が2ヵ月で,縮小手術と定型的根治術は全例が4ヵ月,拡大根治術は6ヵ月を要した. c.ADL :86.8%が3ヵ月まで,縮小手術は1ヵ月以内から回復し,次いで定型的根治術,拡大根治術の順に遅延した. 4.回復の最も遅延する運動は,a.肩関節可動域:側方挙上,前方挙上,水平位外転,b. MMT:水平位内転であった. 5.指椎間距離テストは肩関節可動域回復のよい指標となる.
- 著者名
- 中山 博輝
- 巻
- 11
- 号
- 1
- 頁
- 127-138
- DOI
- 10.11482/KMJ-J11(1)127