h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

霊長類の眼動脈の研究・I-ヒト眼動脈の動脈造影写真による立体的解析-

ヒト解剖体の眼動脈の選択的動脈造影を行い,立体的解析により眼球後間隙での網膜中心動脈・後毛様体動脈の特異な走行を認め,不明な点の多い外眼筋枝と眼動脈各分枝の分岐について詳細に観察した. 1)眼動脈は眼窩内を走行中,視神経を下外方より横断する部位(第2部)を中心に3部に分けられる. 2)網膜中心動脈は視神経に侵入直前で,強いS字状の蛇行と回転を伴う複雑な走行を呈してその走行をほぼ直角方向に変え,視神経内に侵入する. 3)後毛様体動脈は眼球後縁直前で大きい回転を伴う屈曲と蛇行を呈して走り眼球後縁に達し,次いでその方向を約60~90゜に変え上行し,眼球の下方より数条に分枝しながら眼球に分布する. 4)観察した18例中1例に眼球の上方より分枝しながら眼球に分布する型を認めた.本型はニホンザルの後毛様体動脈に多く認められた. 5)後毛様体動脈は,その分岐部位と走行・分枝および眼球への侵入部位に特徴が認められ,外側・内側・副―後毛様体動脈の3動脈に区別される. 6)網膜中心動脈は約61%で眼動脈主幹より分岐するが,残り約39%は後毛様体動脈との共同幹として分岐しその大半は内側―後毛様体動脈との共同幹であった.7)第3部より太い筋枝(眼筋動脈I:内側直筋,下直筋,下斜筋への筋枝を分枝する)を分枝する型(約83%)と,分枝しない型(約17%)の2型が観察された.後者では,前者の太い筋枝に代わるものとして,第1部と第2部の移行部および第2部の前半より涙腺動脈等と共に共同幹で分枝する筋枝(眼筋動脈II : 下直筋,下斜筋への筋枝を分枝する)が認められた.
著者名
吉井 致
11
2
242-256
DOI
10.11482/KMJ-J11(2)242

b_download