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Online edition:ISSN 2758-089X

実験的過敏性肺臓炎 ―病理組織学的ならびに免疫学的研究―

過敏性肺臓炎は,肺胞壁に単核細胞,類上皮細胞を伴い壊死を示さない肉芽腫形成を認める,いわゆる間質性肉芽腫性胞隔炎である.発生機序に関して,免疫学的機序の関与が考えられており,体液性および細胞性免疫が発生および経過にどのような役割を示すかが議論され,まだ不明な点が多い. 今回著者は,過敏性肺臓炎の成立過程における免疫学的機序を明らかにする目的で,いくつかの実験を行うことにした.まず実験動物モデルの作製を試み(実験1),次に実験モデルでの肺の経時的組織変化を観察した(実験2).また組織変化での好銀線維の動態(実験3)と免疫組織学的検索,血清抗体価の変動を観察した(実験4).さらに細胞性免疫の関与を検討する一環として,各時期での出現リンパ球の変動をT, B-cellの面から検索した(実験5). 以上の結果をふまえた上で,実験的過敏性肺臓炎の発生メカニズムを考察した. 過敏性肺臓炎の発生には体液性および細胞性免疫の連続的かつ同時発現による組織学的,血清学的変化として現われてくるものと考えられた.すなわち,繰り返し行った経皮的感作により,体液性,細胞性免疫系の両方が,肺を含め全身のリンパ網内系で発動され,吸入気道抗原刺激時までには,肺内のB-, T-cellも増加傾向にあった.同時に血清中には,BαAに対する抗体が存在していた.抗原吸入6時間後からみられた急性期は,吸入に対する非特異的反応の可能性が強く,肺胞壁に沿って起こった抗原抗体反応はimmunecomplexとして存在し,この沈着は24時間目から強くなり始め,胞隔炎形成期には最強 となり,肉芽腫形成期まで到る.この胞隔炎は, immune complexの関与がありⅠⅠⅠ型アレルギーと考えられた.一方,マクロファージの抗原処理を介しての近位リンパ綱内系 でのT-cellの賦活化が行なわれていたと想定すると,胞隔炎がおさまりかけた2週間目頃に, IV型アレルギー反応の結果として肉芽腫が形成されたと考えることができた.
著者名
目浦 研哉
10
1
1-19
DOI
10.11482/KMJ-J10(1)1

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