h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

リチウムの神経生理学的影響に関する研究

正常者と躁うつ病患者について,治療濃度域のリチウムによる神経生理学的影響を検討するためVEP, SEP, CNVおよびMCVを用いてmultimodalな研究を行い,以下の結果を得た.1) 正常者群では CNV振幅とSSEP・N18振幅の増大,SEP・P24潜時の延長並びにVEP振幅の増大が認められ,CNVとSEPの変化は可逆的であった.2)両群のCNV振幅と患者群のSEP・N18振幅は,血漿リチウム濃度との相関が認められた.3)患者群のCNV振幅は,服薬中正常者の場合と同程度であり,非服薬患者では,きわめて低振幅であった.4) MCVは正常範囲内にとどまった.以上の結果からCNVとSEPの振幅増大がリチウムに特異的な反応であり,これらの所見は,服薬期間中持続するものと考えられた.リチウムの神経系への影響は,末梢よりも中枢に対して優勢であり,皮質のみならず皮質下に対しても広範に作用していることが示唆された.
著者名
山本 博一
10
2
149-158
DOI
10.11482/KMJ-J10(2)149

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