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Online edition:ISSN 2758-089X

虚血心筋に及ぼすCa2+拮抗剤の影響に関する研究 第1編 臨床的検討

狭心症は,冠動脈の機能的・器質的障害にもとづく心筋の酸素需要と供給の不均衡によ り生じる一過性の心筋虚血状態である.狭心症には,その病態により心筋の酸素需要増加 に対し供給が不十分な結果生じる労作狭心症と,需要とは無関係に主として冠動脈攣縮に より供給が一義的に減少する結果生じる安静狭心症とが存在する.その治療には需要を減 じる薬剤または供給を増加させる薬剤ないしは攣縮を抑制する薬剤が適応となる. Ca2+拮抗剤であるdiltiazemを用い冠動脈造影にて有意冠狭窄を証明した11例につい て,トレッドミル運動負荷法を用いて運動耐容能を検討した.Diltiazemは運動負荷試験 4時間前にそれぞれ30mg, 60mg,90mgの1回投与を行った.Diltiazemは最大運動時間,狭心痛発現時間, ST低下(0.1mV)発現時間をそれぞれ有意に延長させた.これらの延長はdiltiazem投与量の増加とともに明らかとなった.Diltiazem投与により安静時および一定運動負荷時の収縮期血圧・心拍数・pressure-rate productはともに減少したが,最大運動時の値はいずれも有意な変動を示さなかった.またST低下(0.1mV)時 のpressure-rate productは有意ではないが増加傾向にあった. 以上の成績より,diltiazemの運動耐容能に及ぼす効果には,主として心筋酸素需要量の低下による因子が大きいが,冠血流量増加や心筋細胞レベルでの保護作用など虚血心筋 に対する効果も関与している可能性が示された.
著者名
原田 頼続
10
2
165-173
DOI
10.11482/KMJ-J10(2)165

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