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Online edition:ISSN 2758-089X

アレルギー性接触皮膚炎の成立機序に関する実験的研究:抗原の形成と認識について

JY-l近交系モルモットの耳介に5% DNCBェタノール溶液を塗布し, 3時間後に採取した皮膚にトリプシンを作用させて得た浮遊表皮細胞(DNP-EC)に抗DNP抗体を用いた蛍光抗体法を施行した結果,平均91.7%の細胞にDNP基が証明され,DNP基が分布する細胞の1部はIaを有する細胞(ランゲルハンス細胞)であった.角化細胞ではDNP基は細胞表面にビマン性に分布することが免疫走査電顕法,酵素抗体法により観察された. DNP-ECを正常JY-1モルモットの耳介に5×10 6コ以上皮内注射するとDNCBに対するアレルギー性接触皮膚炎の感作が成立し,DNP-ECを超音波で破壊しても感作能力は変わらなかった.更にそれを56℃ 30分間加熱しても感作は変わらず成立したが,凍結・融解を繰り返すと感作率は著しく低下した. DNP-ECの投与の前後3日以内に注射部位の皮膚をtape strippingすると感作率は著しく低下したが, tape strippingと同時にDNP-ECを注射する際,正常表皮細胞(EC)を1×10 7コ以上あるいは腹腔マクロファージ5×10 6コを加えることにより, tapestrippingの影響は消失し感作の成立は回復した.またtape strippingにより感作が成立しなかった動物にDNCBを塗布して再感作を試みたが免疫学的不応(トレランス)の状態になっていた.トレランスの誘導はDNP-ECにECを3×10 6コ加えると抑制された. 以上の成績から,皮膚に接触したハプテンは角化細胞,ランゲルハンス細胞の主として細胞膜成分に結合し,このようにして形成された抗原を表皮ランゲルハンス細胞が貪食,消化,提示し,これを免疫担当細胞が認識することによりアレルギー性接触皮膚炎の感作は成立する.ランゲルハンス細胞の関与がない場合には.トレランスが誘導されると考えられる.
著者名
岡 大介
10
2
186-196
DOI
10.11482/KMJ-J10(2)186

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