腎盂扁平上皮癌 全身に広範な転移を伴い,全経過10カ月で死亡したが,生前の確定診断が困難であった腎盂扁平上皮癌の2剖検例を経験したので報告する.第1例は右鼠径部リンパ節腫大を,第2例は腰痛を主訴として入院し,両者とも腎盂腎炎,尿路結石を合併したが,顕微鏡的血尿のみで肉眼的血尿はなく,排泄性腎盂造影上,前者では排泄障害が,また後者では腎盂の描出がなかった.文献的考察から,腎盂扁平上皮癌はその発生は稀であるが,本報告例でみられたように予後が非常に悪く,尿路感染症または結石症を伴うことが多いと一般にいわれているので,それらの合併を伴い排泄性腎盂造影上に異常のある患者に対しては,いつも本症の可能性を考慮して注意深く検討する必要があると思われる.