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ヒト胎児肺組織によるC19 STEROIDのAROMATIZATION 活性に関する研究

卵巣から分泌されるestrogenは主としてestradiolで,estroneは末梢組織で生合成されることは現在一般に認められている.それらの末梢組織としてはヒト肝,毛嚢,脂肪組織,ヒト胎児脳があげられているが,その他の部のestrogen生合成とその詳細な生成機序は不明である.ヒト胎児肺組織により,C19 steroidがaromatizationを受けることについて検索し,下記の結果が得られた.(1)ヒト胎児肺組織由来とされるWL-38培養株細背の培養液中に,対照としたヒト卵巣embryonal carcinoma由来の培養株細胞の培養液中より, radioimmunoassayにより estroneの有意の高値が, estradiol, estriolの値に差はないことが得られた.(2)川崎医科大学衛生学教室植木助教授により樹立,維拝されているヒト胎児肺由来HEL-53培養株細背を14C-androstenedioneを基質としてincubate し,生成物を培養液より抽出,数回のクロマトグラフィーにより純化を行い,再結晶法にてestroneが0.81%の転換率で生合成されることを確認した.(3)合法的人工妊娠中絶により患者の同意を得て得られた妊娠16週2日のと卜胎児肺組織を14C-androstenedioneを基質としてincubate し,クロマトグラム上estradiolと近似のRfを示す生成物を得,estradiolとして再結晶を行ったが,操作中に放射能が喪失し,結果としてその生成物がestradiolでないことが確認された.(4)妊娠19週5日の合法的人工妊娠中絶により,患者の同意を得て得られたヒト胎児組織につき下記の4種のincubationを行った. ① 14C-androstenedioneを基質として肺組織,② 14C-testosteroneと肺組織, ③ 14C-androstenedioneと腎組織,④ 14C-androstenedioneと腓腹筋.その結果①においてはestrone, estriolの生合成をそれぞれ0.15%,0.04%の転換率で同定し, ②においてはestrone生合成を0.26%の転換率で同定した. ③④においてはestrone生合成はみられなかった.( 5 ) HEL-53培養株細胞を14C-cholesterolを基質としてincubation したがestrogenの生合成は認められなかった.(6) HEL-53培養株細胞を新生児臍帯血中値に近い培養液ml当たり20.3ngのestrone, 3.86ngのestradiolを加え,14C-androstenedioneを基質としてincubateしたが, estrogenの生合成は認められなかった.上述の検索結果よりin vitroでヒト胎児肺組織はandrostenedione, testostroneよりestroneを生合成するaromatization活性を有することが認められ,またestriol生合成の酵素活性も有することも示唆された.しかし,このaromatization活性のinvivoにおける意義については不明で,今後さらに検索されるべきであると考える.
著者名
杉山 守
10
3
339-348
DOI
10.11482/KMJ-J10(3)339

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