Online edition:ISSN 2758-089X
人型結核菌体抽出多糖体(SSM:丸山ワクチン)の癌増殖抑制に関する研究 癌細胞膜分子構築の変化に伴う間質反応とコラーゲン増殖collagenesis
T細胞欠除のヌードマウスを使用して人癌由来の培養細胞胃癌(HGC,未分化癌)および肺癌(HLC,腺癌)を中心にxenograftsを作製した.他方マウス由来の神経芽細胞腫NB41A3のallograftsをも作製し比較した. HGCは2×107で80~100%, HLCは6×106で100%, NB41A3は3×103で100%生着し巨大な固型腫瘤を形成する.以上の癌生着の高度な確率よりSSM-A投与を移植と同時に行うと癌増殖に伴って,コラーゲン増殖はさらに顕著となった. 前報の乳癌の経過報告とともにSSM-Aは癌の中でも乳癌に著効を奏した. SSM-Aは元来リンパ球賦活としての免疫療法として登場したが,著者の知見に関する限りリンパ球活性化より問質,間葉系細胞の活性化が癌増殖の抑制には重要であると考えられた.間質細胞の代表的な線維芽細胞はin vitroでも旺盛な増殖をするが,本細胞と癌細胞との混合培養でリンパ球,食細胞の媒介なくとも両細胞間の直接接触によっても著明なコラーゲンの産生と増殖が見られる. ヌードマウスでの実験でコラーゲン増殖は癌移植の初期は血管細胞からのコラーゲン増殖が重要であり,この誘発と増殖パターンはそれぞれの癌細胞によって反応を異にした.重要なことは,癌細胞膜の分子構築の変化に依存することで,円二色性を検討した.その結果,細胞膜上に局在する多糖体,蛋白の変化よりも糖蛋白等の複合体の分子構造の変化が重要で,血管由来のコラーゲンの反応と増殖の誘発に関与していることがわかった.この誘発後のコラーゲンの増殖促進に人型結核菌多糖体は重要な役割を演じている. ヌードマウスを使用しての実験で明らかにしたことは癌増殖の抑制には全身に分布する間質細胞とこれに由来するコラーゲン増殖が重要で,このコラーゲン増殖には線維芽細胞のほかに筋線維,神経線維,軟骨等も癌細胞の浸潤により破壊されればコラーゲン産生源となり,SSMはコラーゲン増殖促進に役立ち,修復機転を促進し,ひいては癌増殖阻止に役立つものと考えられる.
- 著者名
- 木本 哲夫
- 巻
- 10
- 号
- 4
- 頁
- 445-464
- DOI
- 10.11482/KMJ-J10(4)445