Online edition:ISSN 2758-089X
出産前後における妊産婦の精神状態 -Beckうつ病自己評価表を用いて-
川崎医科大学産婦人科にて1980年1月より1982年6月までの2.5年間に分娩した614
例中の191例について,妊娠38週目及び産後1週目にBeckうつ病自己評価表を施行し, 妊娠・出産と抑うつとの関係を中心に調べた. (1)精神病発現は1例(妊娠末期の分裂病再燃) (2) BDI平均点, 10点以上の出現率,産前,産後得点比較においては,産前が高い. (3)行為抑制,易疲労性,性欲低下,不眠,心気傾向,自己醜悪感は産前・産後ともにコントロール群より高い. (4)自己嫌悪感,抑うつ気分,絶望感,失敗感,不満足感,自責感,罪悪感,自傷念慮はコントロール群より低い. (5)初産例は経産例に比し産後に得点が低下せず,興味低下,いらいら感,心気傾向 などが経産例に比し高い. 以上の結果より, ① 妊産婦における精神病発現率は症例数が少ないため断じ得ない. ② 正常範囲内といえる妊産婦の精神症状は,抑うつとは異なった性質のもので,内分泌精神症状群との関連のみならず,現実的不安に対する反応という面からも今後検討をしてゆかねばならない事を論じた.
- 著者名
- 渡辺 洋一郎, 他
- 巻
- 9
- 号
- 2
- 頁
- 113-119
- DOI
- 10.11482/KMJ-J9(2)113