抗生剤起因性大腸炎の検討―特に急性出血性大腸炎について― 過去8年間に抗生剤による大腸炎を11例経験した.いずれも偽膜性大腸炎型ではなく,出血型であった.出血型ではペニシリン系,セフェム系の抗生剤投与と便の性状が水様血性下痢である点で臨床的に診断できる.便の培養ではKlebsiella oxytocaが有意に検出された.偽膜性大腸災で起因菌とされるClostridium difficileと抗生剤起因性出血性腸災との関係は明らかにできなかった.内視鏡的には帯状またはびまん性の発赤と浮腫が直腸よりもS状結腸や下行結腸に多くみとめられた.鑑別診断として虚血性大腸炎があり,臨床的にむずかしい.治療は該当抗生剤の投与中止と補液を主とし,腹痛には抗コリン剤投与で様子をみて良い.