h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

異なる経過をたどった腎障害を合併したグリホサート中毒の2症例

グリホサート含有除草剤は比較的安全性の高い除草剤として知られているが,大量に内服した場合には死亡例も報告されている.特に腎機能障害を合併した症例は重症とされ血液透析も検討されるが,現在のところその導入基準及び有効性は明らかとなっていない.今回,腎機能障害を呈した重症中毒症例を2例経験したが,大きく異なる経過をとったため,血中グリホサート濃度の推移を踏まえ,透析の有用性について考察した. 症例1は40歳代男性.自殺目的でグリホサートイソプロピルアミン塩を250 ml 飲用した後,嘔吐・下痢の症状を認め当院へ搬送された.来院時,意識は清明でバイタルサインは安定していたが,入院後,呼吸不全,腸閉塞,無尿を来したため,人工呼吸管理,イレウス管挿入を施行した.輸液負荷にて再度尿の流出が得られたため血液透析は施行しなかった.その後,腎機能障害は改善し,呼吸状態も安定.第16病日に抜管し第26病日に軽快退院した. 症例2は70歳代男性.自殺目的でグリホサートカリウム塩を約250 ml 飲用し,当院へ救急搬送された.意識は清明でバイタルサインは安定していたが,来院時より無尿の状態であった.輸液負荷・利尿剤の持続投与に反応がないため,透析を施行した.透析後より自尿が得られ,第6病日に退院した.これは,同様に腎機能障害を合併した症例1と比較し,入院期間は約1/4と短期間である.血液透析を施行する前後で,グリホサートの血中濃度が低下しており,グリホサートを血液中から除去することで,症状の軽減,及び早期退院に結びついた可能性がある. グリホサート含有除草剤の中毒を2症例経験した.血液透析施行例で非施行例と比べ入院期間が短かったことから,血液透析が有効である可能性が示唆された.有用性の証明には,今後さらなる症例の蓄積が必要であるが,腎機能障害を合併したグリホサート含有除草剤中毒の症例に対し,血液透析を検討する価値があると思われた.doi:10.11482/KMJ-J42(2)51 (平成28年4月28日受理)
著者名
竹原 延治,他
42
2
51-56
DOI
10.11482/KMJ-J42(2)51
掲載日
2016.7.14

b_download