h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

体外式腹部超音波が診断に有用であった十二指腸巨大Brunner 腺過形成の一例

Brunner 腺過形成は十二指腸腫瘍性病変で,大きさが40mm を超えるものは10% 未満と稀である.医学中央雑誌で「腹部超音波」「Brunner 腺過形成」のキーワードで検索すると,関連した報告はない.体外式超音波検査(US)が診断に有用であったBrunner 腺過形成の一例を報告する.症例は50歳代,女性.食欲不振,心窩部痛とタール便を主訴に近医受診.貧血を認め,出血源検索目的に行った上部消化管内視鏡検査(EGD)で胃内に約 45 mm の腫瘤性病変を認め精査目的に当院紹介となった.血液生化学検査ではHb 9.1 g/dl,MCV 89.1 fl,MCH 30.0 pg と正球性正色素性貧血を認め,BUN/CRE 比は43.1と上昇していた.当院でのEGD では十二指腸球部に内腔をほぼ閉塞する45×40 mm の腫瘤性病変を認めた.腫瘤表面の異型性は目立たないが,oozing bleeding を伴ったびらん形成を認めた.粘膜下腫瘍を疑い生検も行われたが確定診断には至らなかった.単純造影CT では十二指腸球部に 45 mm 程度の腫瘤性病変を認め,辺縁は遷延性に造影された.内部は低吸収域が認められ,嚢胞変性や壊死が疑われた.周囲臓器への浸潤や転移を示唆する所見は認めず,粘膜下腫瘍が疑われたが癌は否定できなかった.US では十二指腸球部後壁の第2層から第3層に存在する約55 mm の粘膜下腫瘍が認められた.固有筋層は正常で,内部は大半が多房性嚢胞からなり,嚢胞間に充実成分がみられた.血流は比較的豊富であるが血管径や形状に明らかな不整は認めなかった.以上より十二指腸Brunner 腺過形成が疑われた.外科的切除の方針となり,開腹で十二指腸粘膜下層剥離術を行った.術材の組織診断はBrunner 腺過形成で超音波診断と矛盾しない所見であった.十二指腸粘膜下腫瘍の鑑別には超音波内視鏡が有用であるが,大きな病変では全体の描出が困難などの欠点もある.一方でUS は内視鏡侵襲なく,比較的大きな病変も描出可能で,特に本症例の様に前庭部付近は良好な観察が期待できるため,上部消化管の精査に応用できる.doi:10.11482/KMJ-J42(2)57 (平成28年5月9日受理)
著者名
中藤 流以,他
42
2
57-68
DOI
10.11482/KMJ-J42(2)57
掲載日
2016.7.14

b_download