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Online edition:ISSN 2758-089X

Immune Complexに伴う表皮の増殖性変化

Horseradish peroxidase (HRP)で感作したモルモットの腹部皮膚にHRP 100μg,10μgをそれぞれ皮内注射し,又,同様にbovine serum albumin (BSA)で感作したものにBSA 100μgを皮内注射し,Arthus反応を惹起させた.そして1, 4, 8, 24, 48,72時間後に生検し, 3H-thymidineを使ったオートラジオグラフィーで表皮基底細胞の標識率を算出し,Arthus反応が表皮のDNA合成能に及ぼす経時的な影響を未感作のモルモットにHRP 100μg, BSA 100μgを皮内注射したものと比較検討した. さらにモルモットの健常腹部皮膚にHRPとantiHRP IgGにより調製した不溶性immune complexを皮内注射し,抗原のみを皮内注射したものと比較検討した.これらの結果は以下のごとくであった. 1. HRP 100μgで惹起したArthus反応では, 1, 4, 8時間後に標識率は減少し,未感作のモルモットにHRP 100μgを皮内注射した群に比べ著明に低値であった. 2. HRP 10μgで惹起したArthus反応では, 1, 4, 8時間後において減少傾向はなく,HRP 100μgで惹起した群に比べ著明に高値であった. 3. BSA 100μgで惹起したArthus反応では, 1, 4, 8時間後において減少傾向はなく,未感作のモルモットにBSA 100μgを皮内注射した群に対し, 1時間後は低値であったが,4, 8時間後では差はなかった. 4. 24時間後,すべての群で標識率は高値を呈したが, 48時間後も,対照群が著明に減少したのに対し,Arthus反応群では高値を保持した. 5.健常皮膚へのimmune complexの皮内注射4時間後の標識率は抗原だけを皮内注射した群より低値であった. 以上の結果より Arthus反応は24時間目以後,表皮のDNA合成能を高める一方,強い反応を惹起した時は8時間目までそれを抑制することが示唆された.
著者名
旗持 淳
8
2
158-167
DOI
10.11482/KMJ-J8(2)158

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