Online edition:ISSN 2758-089X
急性期脳梗塞患者における血液透析は短期あるいは長期死亡の危険因子である
慢性腎臓病は脳血管障害を含む心血管疾患の独立した危険因子である.透析患者の脳卒中発症リスクは非透析患者に比較して高い事が報告されている.しかし,血液透析施行と,急性期脳梗塞患者の短期及び長期死亡の関連は不明である.今回我々は,急性期脳梗塞患者における院内死亡及び退院1年後の死亡に透析が関与するかどうか検討した.2007年4月~2015年3月に当科に入院した発症24時間以内の脳梗塞患者を後ろ向きに検討した.血液透析の有無により,血液透析あり群となし群に分類し,臨床背景を比較した.加えて末期腎不全患者(eGFR15ml 分/1.73m2以下)において,血液透析あり群となし群に分類し,臨床背景を比較した.更に院内及び退院後1年以内の死亡の有無により生存群と死亡群に分けて,血液透析を含む関連因子を多変量解析で検討した.急性期脳梗塞1,894例が登録された.平均年齢は73.8±11歳,男性は1,122人(59.2%)であった.65例(3.4%)が維持透析中であった.透析群と非透析群の背景因子の比較について示す.年齢(69.6±11.9 vs. 73.7±12歳 P =0.013)は透析群が有意に若く,高血圧の既往(91% vs. 70% P<0.001),糖尿病の既往(45% vs. 24% P<0.001),脳底動脈の閉塞(7% vs. 2% P=0.001)が透析群では有意に高かった.また全体の院内死亡率は5.3%(96/1,894人)であった.透析群は非透析群と比較して院内死亡率(14% vs. 5% P=0.001)は有意に高かった.末期腎不全患者間でも,透析群は非透析群と比較して院内死亡率(15% vs. 0% P=0.038)は有意に高かった.院内死亡群と生存群に分けて多変量解析をしたところ入院時の年齢(オッズ比(OR)1.1,95%CI1.02-1.23,P=0.013),入院時NIHSS 高値(OR1.2,95%CI1.12-1.38,P=0.012),脳底動脈の閉塞(OR3.3,95%CI1.32-3.84,P=0.011),透析群(OR7.8,95%CI2.259-26.79,P=0.001)が独立した関連因子であった.次に退院後1年以内の死亡率は7.9%(226/1,798人)であった.透析群は非透析群と比較して1年後死亡率(21% vs. 12%, P=0.001)は有意に高かった.末期腎不全患者間でも,透析群は非透析群と比較して院内死亡率(22% vs. 8%,P=0.042)は有意に高かった.1年以内の死亡率と生存群に分けて多変量解析を実施したところ年齢(OR1.1,95%CI1.07-1.28, P=0.014),内頚動脈の閉塞(OR1.9,95%CI1.34-4.62, P=0.009),退院時mRS3-5(OR2.3,95%CI1.6-3.2,P=0.008),透析群(OR2.5,95%CI1.34-4.62,P=0.001)が独立した危険因子であった.以上より血液透析は脳梗塞後の短期及び長期死亡の因子である. doi:10.11482/KMJ-J42(2)99 (平成28年8月13日受理)
- 著者名
- 城本 高志,他
- 巻
- 42
- 号
- 2
- 頁
- 99-109
- DOI
- 10.11482/KMJ-J42(2)99
- 掲載日
- 2016.10.5