h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

動脈内血流速分布および圧勾配の推定

血流理論の病態生理学的な有用性を検討するために,圧勾配既知の場合の血流分布を理論的に解析した.対象としては,健常人及び大動脈弁閉鎖不全症,大動脈弁狭窄症を用い,Womersleyによって提唱されたNavier-Stokesの線形解を求めることによって,管内流速プロフィルを算出した.ついで,これらの解を実際にCW (continuous wave)超音波ドップラー法にて測定した血流速と対比検討した.その結果(1)大動脈弁閉鎖不全症にて得られる流速分布解は,高周波成分に富んだものであり,逆流も顕著にみられる.これに対して,大動脈弁狭窄症では流速変化はゆるやかであり,かつ逆流成分が少ないことが示された.健常人においては,両者の中間的な流れ方を示した.(2)このような理論解は,実際に超音波ドップラー法にて得られた血流分布をよく説明しえた.(3)逆に計測された流速分布から圧勾配を計算すると,そのパターンは実測したものとよく一致することも確かめられた.
著者名
今村 正敏, 他
5
1
06-12
DOI
10.11482/KMJ-J5(1)6

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