Online edition:ISSN 2758-089X
サイトメガロウイルス腸炎による小腸穿孔を契機に診断されたAIDSの剖検例
サイトメガロウイルス(CMV)感染症はAIDS 剖検例では約60% に認められ,AIDS の日和見感染症の中で最も多い日和見感染症である.CMV 腸炎による小腸穿孔例を経験したので,剖検所見を含めて報告する. 患者は63歳男性.発熱,呼吸困難が出現し近医で抗菌薬を投与されるが改善なく,他院入院後間質性肺炎が疑われ副腎皮質ステロイド,ST 合剤の投与を受けるも増悪.気管挿管後に当院転院となり,転院時の胸腹部画像にて腹腔内にfree air を認めたため緊急手術となった.回腸に穿孔を認め,回腸4.2cm を切除し,切除標本の免疫染色でCMV 腸炎と診断した.術前検査でHIV-1抗体陽性を示しHIV-1 RNA 量 32,000 copies/mL で,CD4陽性細胞は6/μL と著減していた.気管支鏡検査ではBALF 中ニューモシスチスDNA が陽性を示した.AIDS と診断しニューモシスチス肺炎(PCP)とCMV 腸炎の治療を行ったが呼吸不全が進行し第11病日永眠された.剖検所見の主病変はCMV 肺炎とPCP で,副病変として腹水,胸水を認めた.CMV に関しては心筋,副腎,脾臓,食道,胃,小腸,大腸に存在を認めた.直接死因は肺炎による呼吸不全であった.本例は早期からHIV 感染症を疑うべき既往歴,現病歴であったことから,AIDS 発症前にHIV 感染症を診断する重要性を示した症例と考えられた.(平成21年10月16日受理)
- 著者名
- 徳永 博俊,他
- 巻
- 36
- 号
- 1
- 頁
- 53-60
- DOI
- 10.11482/2010/36.053.2010.Igakukaishi_Tokunaga_etal.pdf