Online edition:ISSN 2758-089X
マウス内耳発生におけるプログラム細胞死の検討
プログラム細胞死の研究は以前から行われているが,その制御メカニズムは未だ不明な点が多い.これに対し我々はapoptosis 検出法であるTUNEL 染色で,胎生12日マウス内耳においてTUNEL 陽性死細胞にはapoptosis だけでなく,autophagic cell death も存在することを報告した.また我々は内耳毒性を有するCDDP を妊娠マウスに投与し,胎仔内耳の総死細胞数は不変であるのに対して,死細胞におけるapoptosis 比率減少とautophagic cell death 比率増加を発見し,これらが胎生期内耳の防御機構と考えた.本研究ではこの機構解明を目的に,CDDP 投与胎生12日マウスの内耳を用いて,関連遺伝子のReal time-PCR 法,Western Blot 法,免疫染色法による検討を行った. Real time-PCR では,CDDP 投与でautophagy 関連遺伝子beclin1と,apoptosis 関連遺伝子cspase3の発現が増加した.免疫染色ではapoptosis 細胞のみcleaved caspase3蛋白発現を認め,Western Blot ではCDDP 投与でbeclin1とcspase3 の蛋白発現が増加し,cleaved caspase3は逆に減少した. このbeclin1遺伝子発現増加は,以前に我々が報告したCDDP でのautophagic cell death 比率増加に矛盾しないものであった.これに対し,apoptosis 関連遺伝子のcaspase3発現増加は,apoptosis 比率減少と矛盾するが,免疫染色,Western blot の結果からは蛋白レベルでの抑制が示唆される.特にcaspase3蛋白増加に対し,切断後の活性型蛋白であるcleaved caspase3が逆に減少していることから,caspase3切断による活性化プロセスでの抑制が示唆された.(平成21年10月8日受理)
- 著者名
- 柴田 大
- 巻
- 36
- 号
- 1
- 頁
- 35-45
- DOI
- 10.11482/2010/36.035.2010.Igakukaishi_Shibata.pdf