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Online edition:ISSN 2758-089X

酢酸鉛のラット甲状腺機能におよぼす影響

酢酸鉛のラット甲状腺機能におよぼす影響を,いくつかの甲状腺機能の検査をすることによって検討するために本研究を行った.急性毒性実験では雄ウィスターラットに酢酸鉛溶液を鉛として体重1kg当たり1mg, 5mgまたは25mg になるように腹腔内に注射した.亜急性毒性実験ではラットに酢酸鉛を100 mg/1 または10g/1の濃度になるよう飲料水に溶解させて91日間投与した.急性毒性実験では3日後に,また亜急性毒性実験では実験の最後にラットより心臓穿刺によって採血したのち,さらに10μCiの131Iを腹腔内に注射し,24時間後脱血死させた.甲状腺機能検査として甲状腺重量,甲状腺131I摂取率,血清131I量,血清蛋白結合131I量(PB131I),T/S比,変換率,血清T3およびT4量を測定した.血液検査として血液鉛濃度, ALA-D活性,ヘマトクリット値およびヘモグロビン量を併せて測定した.以上の実験から次の成績が得られた.1) 24時間甲状腺131I摂取率は急性毒性実験,亜急性毒性実験ともに増加した.2) PB 131I 量は急性毒性実験では変化なく,亜急性毒性実験では減少した.3)変換率は急性毒性実験では有意差なく,亜急性毒性実験では減少した.4)T/S比は急性毒性実験で上昇し,亜急性毒性実験では有意の変化を認めなかった.5)急性毒性実験において血清T3量は増加したが,血清T4量は変化がなかった.6)甲状腺重量は両実験とも変化はみられなかった.7)血液変化,とくにALA-D活性は鉛暴露に対して甲状腺機能の変化よりも一層感受性が高いように思われた.
著者名
望月 義夫, 他
4
1
27-34
DOI
10.11482/KMJ-J4(1)27

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