歯肉上皮のマスト細胞に関する電子顕微鏡的研究 軽度の辺縁性歯周炎に罹患した46歳の女性の遊離歯肉を電顕的に観察し,その上皮内にマスト細胞が多数侵入しているのを認めた.基底細胞層のマスト細胞には細胞自体の崩壊やマスト細胞顆粒の脱顆粒における多様な形態学的変化が認められ,その際,マスト細胞周辺の上皮細胞間には強い水腫性の変化が認められた.有棘細胞層のマスト細胞では,基底細胞層のマスト細胞と比較して,マスト細胞顆粒周囲の空隙形成のみがわずかに認められ,マスト細胞周辺の上皮細胞間の水腫性の変化は軽微であった.以上のことから,歯肉上皮内とくに基底細胞層にはマスト細胞自体の崩壊やマスト細胞顆粒の脱顆粒をおこさせる要因が存在する.