h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

膠原病によるレーノー症候群 -血管造影と皮膚および肺病変の対比-

レーノー症候群を伴う膠原病,特にPSS(汎発性強皮症, progressive systemicsclerosis)の患者7例について前腕動脈造影を施行し手動脈の血管造影上の変化と手背皮膚の病理組織学的変化との関連を検討した.また7例中5例は同時に開胸術により上胸部交感神経切除を行なう機会もあり,その際肺生検を行って肺の病理学的変化も検討することが出来た.前腕動脈造影所見では全例においてその病変の部位は共通しており,尺骨動脈および骨間動脈遠位あるいは手掌動脈弓に閉塞あるいは途絶をみることが多く,さらに中手骨動脈に狭窄,閉塞,蛇行,先細りなどが認められる.また皮膚では真皮の中層より下層にかけての著明な膠原線維の増生と硝子化,さらには皮下の血管壁,特に血管内膜の著明な肥厚と,リンパ球浸潤,フィブリン沈着なども認められた.しかしながら皮膚の生検でこのようなPSS特有の典型的な所見の認められたものは,著者らの症例のうちPSSによるレーノー症候群と診断された7例中,僅かに4例にすぎなかった.また採取しえた肺生検所見は,肺胞壁はcollgen fiber の増生により肥厚し,一部では硝子様変性に陥り,肥厚した肺胞壁は肺胞腔を狭小化し,また円形細胞の浸潤が認められた.さらに小血管壁の硝子化と肥厚がみられる部分もあった.しかしこの様な肺組織学的所見は開胸術を行なったPSSの5例のうち僅かに2例のみに認められたにすぎない.ただこれら皮膚および肺の病変は多彩で出没しやすいことから,病期によってその所見は異なるだろうが,明らかなレーノー症状を伴っている症例でも皮膚には必ずしも定型的なPSSの組織所見が完成しているとは限らず,また皮膚と肺の病変の進行度は必ずしも一致していない事がいえる.
著者名
勝村達喜, 他
4
2
94-101
DOI
10.11482/KMJ-J4(2)94

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