h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

食道アカラシアの治療 バルーン拡張術の有効性に関する検討(第2報)

食道アカラシアは食道運動障害を呈する疾患で,良性疾患ではあるものの,QOL を大きく障害し,食道癌の発生リスクともなるため,適切な診断治療が重要である.一般的に,治療は内視鏡的治療や外科的治療が行われる.以前,我々は内視鏡的バルーン拡張術(pneumatic dilation:PD)を行った16例の食道アカラシアについて,PD の有効性に関する因子を検討し報告した.近年,新たな食道運動障害の診断基準(Chicago 分類)も策定されたことも踏まえ,アカラシア症例36例での検討を行ったため第2報として報告する.対象は当院で食道アカラシアと診断し加療した36例で,うち27例(男性8例,女性19例,平均年齢51.0±16.5歳)にPD を行った.対象をPD有効例と無効例とに群分けし,その2群間で患者背景,QOL,High-resolution manometry( HRM)所見,治療前後でのHRM 所見の差異について検討を行った.結果はPD 有効例は19例(70.4%)であった.有効群と無効群との比較を行うと,無効群で女性が多い傾向にあった(p=0.06).HRM所見では有効例でChicago 分類typeⅡアカラシアが有意に多く認められた(p=0.04).また,治療前後のHRM 所見の差異については,有効例で治療前後の下部食道括約筋(lower esophageal sphincter: LES)圧変化率が有意に大きかった.以上より,Chicago 分類typeⅡのアカラシアではPD の有効性が高く,また1度PD を行った症例でもLESP 変化率が大きい症例では有効性が高いことが示された.
著者名
中藤流以, 他
43
1
17-28
DOI
10.11482/KMJ-J43(1)17
掲載日
2017.6.21

b_download