Online edition:ISSN 2758-089X
入院患者における上気道細菌叢の推移についての検討
病棟に勤務する医師,看護婦86例の鼻腔,咽頭培養をおこなった.グラム陰性桿菌の分離率は,鼻腔では13%,咽頭では17%であった.入院患者の上気道細菌叢の推移を検討する目的で,呼吸器内科入院208例の咽頭培養をおこなった.グラム陰性桿菌の分離率は,入院第1日目28%,第4日目37%,第7日目44%であった.疾患別では,慢性閉塞性肺疾患に最もグラム陰性桿菌の分離率が高く,入院第1日目37%,第4日目43%,第7日目60%,次いで肺癌では,それぞれ25%,29%,39%であった.医師,看護婦の咽頭培養からのグラム陰性桿菌の分離率は,入院患者のそれより明らかに低かった.入院患者の咽頭培養からのグラム陰性桿菌の分離率は,入院日数の増加とともに高くなる傾向を示した.これらの理由として,年齢的因子,基礎疾患及び重症度,気道のClearance,好中球の数と機能などの影響が考えられた.抗生物質の影響については,グラム陰性桿菌の分離率は,使用例が未使用例よりも高かったが有意な差はなかった.入院1ヵ月目より,咽頭より常時Klebsiellaを認め,好中球の減少とともにKlebsiella肺炎を併発した急性骨髄性白血病の1例を呈示した.
- 著者名
- 田野 吉彦, 他
- 巻
- 3
- 号
- 1
- 頁
- 32-39
- DOI
- 10.11482/KMJ-J3(1)32