腸管囊腫様気腫,気腹, Chilaiditi症候群,吸収不良症候群を伴う強皮症の1例を報告するとともに,その上部消化管粘膜の直視下生検を行い,生検組織について,組織学的な検討を行った.光学顕微鏡的には,いずれの組織も特に変化は認めなかったが,超微細構造において,食道粘膜有棘層の細胞周辺から細胞間突起内のdesmosomeに向ってtonofilamentの増加を認めた.胃・十二指腸粘膜細胞の基底膜とそれに接する固有層の部分に膠原線維群が不規則に増加しているのを認め,これらは400~500 A の幅をもつ成熟した正常組織にみられると同様の構造を示した.十二指腸粘膜吸収細胞間隙は著しく拡張しカイロマイクロンで充満し,この拡張像は基底膜まで連続していた.強皮症に極めて稀に認められる気腹,腸管囊腫様気腫の原因は不明であるが,細胞間隙の拡張はこれらの成因に関係があると推論した.吸収細胞の細胞質にはphagosome-vacuole, lysosomeの増加を認め,吸収不良症候群の吸収細胞の変化を認めた.
著者名
内田 純一, 他
巻
3
号
3.4
頁
151-161
DOI
10.11482/KMJ-J3(3.4)151
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