h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

t_toukou

組織培養による人癌の研究-ヒト悪性腫瘍細胞と淋巴球相互作用に就て-

細胞免疫に於て幼若化リンパ球が細胞傷害作用を有する事は周知であるが,この標的細胞に腫瘍細胞を仕立てて担癌生体のリンパ球が如何なる作用を有するか,ガンの免疫学的抑制効果として注目されている.著者はリンパ球の特異的免疫学的効果の検討と共にリンパ球の標的細胞への附着は両細胞の細胞膜分子構築の変化に帰着し,両細胞の接着,乃至結合がガン細胞の殺細胞作用に最も重要である事を明らかにした.即ち,結合は免疫学的特異性に依存する他,非特異的にも起る.そこで人癌の場合のアプローチとして人卵巣腫瘍由来の培養細胞を中心に,免疫学的に無関係と考えられるヒト培養リンパ芽球との非特異的結合を試み殺細胞作用の発現を検討した.この際,T細胞としてMOLT-4細胞(ヒトの急性リンパ球性白血病細胞)と B細胞(バーキット淋巴腫細胞)を用いた.この実験でコンカナバリンA,又は仙台ウイルス(HVJ)によって両細胞間の結合が起り前者の場合ガン細胞は著しい細胞融解におちいった.特に非上皮細胞由来の悪性腫瘍細胞で細胞膜に物質又は粒子の附着により潜在する貪食能が発現される腫瘍細胞はリンパ芽球を貪食し自らの著しい融解が起った.結論的にガン細胞-リンパ芽球の結合,附着には特異的免疫学的因子の関与と共に非特異的にも人工的に起す事が出来,殺細胞作用については物質代謝の障害によるものではないかと考えられる.以上の事実から免疫学約作動によるリンパ球の幼若化を必要としないヒトの培養リンパ芽球(細胞株として既に幼若化)を利用して標的細胞としてのガン細胞,特に細胞膜性状を検討してリンパ芽球の結合をはかる事により著しいガン細胞の殺細胞作用が起り,ヒト悪性腫瘍細胞の増殖阻止へのリンパ球の生物学的役割が明らかにされた.
著者名
木本 哲夫
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01-10
DOI
10.11482/KMJ-J1(1)1

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