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Online edition:ISSN 2758-089X

尿剥離細胞診と尿路腫瘍-臨床経験と反省-

1971年4月から1974年10月の間に腎実質癌5例,移行上皮系腫瘍43例(原発性36,再発性7),尿路系の非悪性腫瘍性疾患10例の51患者58例の尿細胞診の検索をした.尿剥離細胞診の分類は陰性(パパニコローの分類class Ⅰ,II),疑い(同class III),陽性(同classIV,V)とした.腎細胞癌の陽性は1例のみ,病理組織学的には腺癌であった.移行上皮系腫瘍の陽性例(%)は17/43 (40%),偽陰性23/43(53%)であった.非悪性腫瘍疾患の偽陽性は1例であった.移行上皮癌の症例は36例で,この中grade l,2は25例で,陽性例は8例,偽陰性例17例であった.一方, grade 3, 4は11例で,陽性例8例,偽陰性例3例であった.文献上,細胞診の検査は1患者に付3回以上施行すべきであること,特にlow gradeの移行上皮系の腫瘍では早朝第2新鮮尿やカテーテル尿で検査するより腎盂や膀胱の洗滌吸引法が診断適中率が高い.最後に,尿剥離細胞診は膀胱鏡やレ線検査などで悪性腫瘍か否か鑑別困難な症例や,初期癌や再発の早期発見に有用である.
著者名
田中 啓幹, 他
1
2
120-127
DOI
10.11482/KMJ-J1(2)120

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