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Online edition:ISSN 2758-089X

可逆性脳血管攣縮症候群の1例

可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome: RCVS)は,雷鳴頭痛で発症し経過中に可逆性の多発性脳血管攣縮を認めることを特徴とする比較的新しい疾患概念である.発症時における雷鳴頭痛はほぼ必発の症状といえ,救急医療の現場ではくも膜下出血を始めとした重篤で緊急の対処を必要とする疾患との鑑別が重要となるが,雷鳴頭痛をきたしうる疾患の一つとしてRCVS の認知度は未だ高いとは言えない.今回,雷鳴頭痛で発症し典型的な経過をたどった症例を経験したので報告する.患者は50歳女性で,電話で相手に謝罪をしていた時に後頸部に突然激痛が出現し,痛みはすぐに頭部全体に拡がり持続した.くも膜下出血を含む頭蓋内疾患について精査したが発症当初には雷鳴頭痛の原因は明らかでなかった.発症3日目と5日目にも1回ずつ雷鳴頭痛を認め,原因としてRCVS を疑いロメリジンの投与を始めたところ,発症6日目以降頭痛は軽快消失し以後再発を認めなかった.発症8日目の頭部MR angiography(MRA)で脳主幹動脈が複数個所で狭小化している所見がみられ,これらは発症から8週後には正常化し,RCVS に矛盾しない経過であった.この特徴的な血管攣縮所見は特にMRA では発症初期には認めないことが多く,本症例においても診断確定に苦慮した.雷鳴頭痛を呈する症例では可逆性脳血管攣縮症候群も鑑別診断に加え診療する必要がある.
著者名
南野 万里子, 他
44
1
35-42
DOI
10.11482/KMJ-J44(1)35
掲載日
2018.2.5

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