h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

アレルギー性鼻炎モデルマウス鼻粘膜における一酸化窒素合成酵素(NOS)の局在

 一酸化窒素(nitric oxide : NO)は,L- アルギニンを基質として,一酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase : NOS)により産生される.NOS には3種類のアイソフォーム(NOS1,NOS2,NOS3)が存在する.気管支喘息患者では,健常人と比べ呼気中NO 濃度が上昇しており,気管支喘息の病態にはNOS2が関与している可能性が動物モデルで示されている.また,アレルギー性鼻炎でも鼻腔内NO 濃度が上昇し,アレルギー性鼻炎モデル動物を用いた研究でNOS2がコントロール群と比べ有意に上昇していたと報告されているが,鼻粘膜におけるNOS の局在を示す報告はない.本研究では,アレルギー性鼻炎モデルマウスを用いて,鼻粘膜におけるNOS アイソフォーム(NOS1,NOS2,NOS3)の同定および局在,遺伝子発現量の変化について調べた.BALB/c 系雄性マウスにCry j 1とアジュバンドの混濁液をday 0(初回免疫日),day 3およびday7の3回,腹腔内投与した(1次免疫).さらに,day13からday26まで連日,Cry j 1を鼻腔内投与した(2次免疫).コントロール群のマウスには1次免疫も2次免疫も実施しなかった.免疫組織化学とリアルタイムPCR を用いて鼻粘膜におけるNOS1,NOS2,NOS3の発現を調べた.免疫組織化学的では,NOS1免疫陽性反応はアレルギー感作群,コントロール群ともに嗅上皮,嗅神経に認めた.NOS2免疫陽性反応はアレルギー感作群では嗅上皮,呼吸上皮,嗅神経,血管内皮細胞,鼻腺導管で,コントロール群では嗅神経,血管内皮細胞,鼻腺導管で認めた.NOS3免疫陽性反応は両群とも血管内皮細胞に認めた. リアルタイムPCR を用いてmRNA の発現量を検討したところ,コントロール群でNOS1,NOS2,NOS3の遺伝子発現を認めた.また,アレルギー感作群はコントロール群と比べNOS1は有意に発現量の低下,NOS2,NOS3は有意に発現量の増加を認めた(p<0.05).NOS2は誘導型NOS であるが,嗅神経,血管内皮細胞,鼻腺導管で恒常的に発現していることが明白になった.NOS2はアレルギー感作群で有意な遺伝子発現量の増加が認められ,コントロール群で認められなかった呼吸上皮および嗅上皮にNOS2の発現が認められた.アレルギー感作群はコントロール群と比べ,NOS1は有意な遺伝子発現量の減少,NOS3は有意な遺伝子発現量の増加を認めた.アレルギー性鼻炎の病態にNOS2だけでなくNOS1,NOS3も関与していると考えられた.(平成20年11月13日受理)
著者名
與田 茂利
35
1
39-50
DOI
10.11482/35.039.2009_Igakukaishi_Yoda.pdf

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