h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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一過性脊髄虚血動物モデルにおけるフリーラジカルスカベンジャーの脊髄保護効果の検討

 胸腹部大動脈手術後の重篤な合併症に,対麻痺がある.大動脈遮断による脊髄への血液供給の途絶と,再還流によって発生するフリーラジカルがその発症に関与していると報告されている.本研究では一過性脊髄虚血動物モデルを用いて,再還流後にフリーラジカルスカベンジャーを投与し,運動ニューロン数,運動ニューロンの断面積と神経学的所見から脊髄保護効果を検討した.22羽の日本白色家兎を用いて,左腎動脈下大動脈を20分間閉塞した.再還流30分後にエダラボン 3mg/kg を投与し48時間後(E48H 群,n=6),7日後(E7D 群,n=6)のそれぞれの神経学的所見と脊髄運動ニューロンの組織学的所見より,その脊髄保護効果を虚血群(コントロール群,n=6)および正常群(シャム群,n=4)と比較検討した.コントロール群で全例,対麻痺となった.脊髄1横断面あたりの正常ニューロン数は,エダラボン投与群で有意に改善していた(コントロール群6±12,E48H 群 38.2±40,E7D 群 24±19).正 常運動ニューロン1個あたりの平均断面積は,E48H 群,E7D 群でそれぞれコントロール群と比較して有意に大きかった.しかし,E48H 群はシャム群より有意に大きかったが,E7D 群はシャム群より有意に小さかった(コントロール群113±117,E48H 群 408±298,E7D 群 267±159,シャム群 377±23).また,E7D 群の脊髄組織において正常運動ニューロンと虚血性運動ニューロンの混在が認められた.再還流30分後のフリーラジカルスカベンジャー投与は,コントロール群と比較して48時間後の神経学的所見は改善した.しかし,組織学的所見では運動ニューロン数はコントロール群よりも増加していたが,運動ニューロンの断面積はシャム群よりも大きく細胞性浮腫が確認された.7日後の神経学的所見でも改善がみられ,運動ニューロン断面積においても縮小がみられたが,虚血性運動ニューロンが混在しており,細胞浮腫より萎縮への進行が考えられ,エダラボン7日後での脊髄保護効果は不十分であると考えられる.この結果より,エダラボンは一過性脊髄虚血に対して神経保護作用を持つものの,遅発性神経障害を完全には抑制できなかった.(平成20年10月30日受理)
著者名
伊藤 寿美子
35
1
27-37
DOI
10.11482/35.027.2009_Igakukaishi_Ito.pdf

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