ベバシズマブはパクリタキセルとの併用でHER2陰性の進行・再発乳癌に対する有効性が示されており,無増悪生存期間を有意に延長させる.しかし,ベバシズマブ特有の有害事象も報告されており,投与の際には注意を要する.今回,再発乳癌に対しベバシズマブを使用し,腸管穿孔を起こした1例を経験した.症例は72歳女性.右乳癌術後5年目に多発リンパ節,肺転移を認め,化学療法で治療中に8次治療としてベバシズマブとパクリタキセル(BP)療法を開始した.1年ほど奏効したが,突然,腹痛を訴え受診した.CT で腹腔内にfree air を認めたため緊急開腹術を施行した.小腸に1か所の穿孔部位を認めた.病理組織検査では,穿孔部に乳癌の転移巣が認められた.乳癌に対するベバシズマブ併用化学療法中の消化管穿孔は報告が少ない.腹膜播種を認める症例やベバシズマブ投与期間の長い患者では,腹部膨満感や腹痛を訴えた際は消化管穿孔を念頭におく必要がある.
著者名
川野 汐織, 他
巻
45
号
頁
43-48
DOI
10.11482/KMJ-J201945043
掲載日
2019.9.3
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