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Online edition:ISSN 2758-089X

妊娠を契機に血小板減少を来たし,子宮内胎児死亡に至った全身性エリテマトーデス及び抗リン脂質抗体症候群の一例

抗リン脂質抗体症候群は,抗リン脂質抗体が産生されることで血栓症を主体とする病態を引き起こす自己免疫疾患である.動静脈血栓症に加え,習慣性流産,早産,妊娠高血圧症候群,胎児発育遅延,胎児機能不全などの妊娠合併症を高率に引き起こすとされている.また患者のうち約半数は全身性エリテマトーデスが併存していると言われている.我々は妊娠を契機に血小板減少を来たし,子宮内胎児死亡に至った全身性エリテマトーデス及び抗リン脂質抗体症候群の症例を経験した. 患者は20歳代女性,未経妊未経産.5年前に全身性エリテマトーデス及び抗リン脂質抗体症候群と診断された.プレドニゾロンとタクロリムス,アザチオプリンによる免疫抑制療法及び低用量アスピリン療法を開始され,数年間に渡りプレドニゾロン5mg/ 日+タクロリムス3mg/ 日+アザチオプリン50mg/ 日で病態は安定していた.妊娠を契機にプレドニゾロン10mg/ 日の単独治療に切り替えたが,徐々に血小板減少が進行してきたため入院し,プレドニゾロン30mg/ 日への増量及びタクロリムス3mg/ 日を再開した.また血栓予防治療として,低用量アスピリンに加えヘパリン療法を開始した.しかし妊娠16週5日で子宮内胎児死亡が判明したため,血栓予防治療を中止し児の娩出に至った. 抗リン脂質抗体症候群合併妊娠は,周産期管理に慎重を要する例も存在することを念頭に置き,特にハイリスク症例に対しては妊娠成立前から産婦人科と連携して治療にあたる必要がある.
著者名
黒﨑 奈美, 他
45
101-109
DOI
10.11482/KMJ-J201945101
掲載日
2019.10.18

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