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Online edition:ISSN 2758-089X

当科におけるAYA 世代乳癌の特徴と予後

Adolescent and young adults(AYA)世代の癌は一般成人の癌に比べ,頻度は低いものの妊孕性の維持など複雑な問題を抱えている.AYA 世代の後半30から39歳では,乳癌の発生頻度が最も高い.今回我々は,AYA 世代の乳癌患者を後方視的に調査し,予後因子を解析した. 対象は2010年1月~2018年12月に川崎医科大学附属病院乳腺甲状腺外科で治療を行った40歳未満のAYA 世代乳癌患者123名(AYA 群).また同期間に治療を受けた40歳以上の非若年乳癌患者1,541名(非若年群)と予後の比較を行った.無病生存率(DFS),全生存率(OS)の予後因子は,単変量解析及び多変量解析で分析した. 両側性乳癌,非浸潤癌,データ不足例を除外した1,322名(AYA 群が99名,非若年群が1,223名)の乳癌患者が予後解析の対象となった.5年DFS はAYA 群で81.5%,非若年群は91.3%であり,AYA 群で有意に不良であった(P = 0.0007).臨床病期を揃えると,病期Ⅱのみで両群間に有意差が認められた(P = 0.0319).5年OS はAYA 群,非若年群ともに96.7% であり,差は認められなかった.AYA 群のDFS 予測因子は,単変量解析では,臨床病期Ⅱ期以上,腫瘍浸潤径2cm 超,血管侵襲陽性が有意の予後不良因子であった.多変量解析では,臨床病期Ⅱ期以上,血管侵襲陽性が独立した予後不良因子であった.OS では,単変量解析では血管侵襲因子のみがOS の有意の予測因子として抽出された.多変量解析では,血管侵襲因子とトリプルネガティブサブタイプが,独立した予後不良因子であった.妊娠関連乳癌は,DFS, OS ともに有意の予後因子とならなかった. AYA 群は非若年群に比べて5年DFS が有意に悪かった.AYA 群の予後因子として,血管侵襲因子が重要なことが示唆された.
著者名
岸野 瑛美, 他
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47-54
DOI
10.11482/KMJ-J202046047
掲載日
2020.11.20

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