h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

当院人間ドックを契機に発見された無症候性胃アニサキス症の3症例

本邦での胃アニサキス症の報告例は多く,健康診断(以下:健診)や人間ドック診療において偶然発見される無症候性の胃アニサキス症の報告例も散見される.我々は,当施設の人間ドックで発見された胃アニサキス症3例を経験したので報告する.症例は58歳女性,66歳男性,73歳男性.自覚症状は全例で無症状であった.診断時期は12月から2月の冬季で,全例で検査数日前に鯖,イカ等の魚介類の生ものの摂食歴があった.血液検査所見では,白血球数は全例で正常範囲であり,CRP は2例で軽度の上昇を認めた(0.02 mg/dl,0.41 mg/dl,0.91 mg/dl).好酸球数は2例で前回値より軽度の上昇を認めた(181/μl から322/μl,379/μl から540/μl).胃内視鏡所見については,穿入部の発赤,浮腫,びらんを全例で認め,2例で非萎縮粘膜領域に虫体が穿入していた.背景胃粘膜所見は「胃炎の京都分類」で評価すると1例が萎縮やびまん性発赤等の所見のないH. pylori 未感染胃相当であり,2例は除菌後の症例(木村・竹本分類:C2 type)であった.過去の報告例と同様,当院で診断した3症例は,全例が無症状で発見され,2例で好酸球数の上昇が認められた.健診・人間ドック診療において胃アニサキス症を検査前に強く疑うことは困難であるが,この疾患を念頭に入れ,無症状であっても十分な問診や内視鏡観察を行うことが重要である.
著者名
⻆ 直樹, 他
48
57-64
DOI
10.11482/KMJ-J202248057
掲載日
2022.10.27

b_download