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Online edition:ISSN 2758-089X

POP-Q システムとEQ-5D を用いた子宮全摘を伴う腹腔鏡・ロボット仙骨腟メッシュ固定術の評価

背景:超高齢社会の到来で,QOL を損なう骨盤臓器脱に対する手術療法は増加し,当院でも腹腔鏡・ロボット仙骨腟メッシュ固定術(LSC・RSC)を行っている.子宮の取り扱いは施設によって異なり,子宮温存,子宮亜全摘,子宮全摘術のいずれかを併用する.子宮全摘を併用した場合,メッシュびらんの頻度が増加するという報告があり,メッシュびらんを予防する目的で子宮頚部を残す腟上部切断術が主流である.しかし,悪性病変の発生リスクを低減するために,当院では子宮全摘を伴うLSC・RSC を施行している.これまで子宮全摘を伴うLSC・RSC に限定してPOP-Q スコアやQOL を評価した報告はない.今回,子宮全摘を伴うLSC・RSC での術前術後の骨盤臓器脱の構造的な評価方法であるPOP-Q システムによるスコアリングとQOL の評価方法であるEQ-5D を用いて,当院で行っているLSC・RSC の有効性,患者満足度を検討した. 方法:2020年4月より1年間,骨盤臓器脱の患者に同意を得て,手術前後でPOP-Q システムの記録とEQ-5D による質問を実施し,POP-Q システムのスコア,stage とEQ-5D の関係や手術前後の評価を行った. 結果:症例は合計22例で,術式はLSC とRSC によるものが各11例であった.全体の手術成績平均は,手術時間148分,出血量30 ml,摘出子宮54 g だった.全体のPOP-Q stage は,術前平均2.45,術後平均0.41で,有意に改善を認めた(p <0.001).全体のEQ-5D のスコアは,術前0.719,術後0.991で有意に改善を認めた(p<0.001).また2022年3月までの観察期間中,再発やメッシュびらんを認めた症例はなかった.子宮全摘を併用したLSC・RSC は,腹腔鏡とロボットのいずれにおいてもQOL を改善した.短期から中期の観察ではあるが再発やメッシュびらんを認めなかった.子宮全摘を併用したLSC・RSC は,仙骨腟メッシュ固定術の一つの選択肢となり得ると考えられた.
著者名
鈴木 聡一郎, 他
48
73-78
DOI
10.11482/KMJ-J202248073
掲載日
2022.12.1

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