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Online edition:ISSN 2758-089X

体外式腹部超音波検査が診断に有用であった腹壁前皮神経絞扼症候群(ACNES)の1例

腹壁前皮神経絞扼症候群(anterior またはabdominal cutaneous nerve entrapment syndrome: 以下ACNES)は肋間神経の前皮枝が腹直筋を貫通する部位で圧迫されることによって腹痛を来す疾患で,その有病率は基幹病院救急外来を受診する腹痛のうち約2%とされ,決して稀ではない.しかし,身体診察,血液検査および画像検査で異常が検出されにくいこと,またその認知度の低さもあり過小診断されることも少なくない.診断は身体所見などから行われることが多く,(a)圧痛点は腹直筋の外側よりも内側で <2cm2の範囲である,(b)血液検査・画像検査で異常を認めない,(c)Carnett’s sign が陽性,(d)局所麻酔薬注入後に疼痛が軽快する,などが提唱されているものの標準化された診断基準はなく,他覚的検査による評価が困難な点が指摘されている.我々は以前からACNES の診断に体外式腹部超音波(abdominal ultrasonography: 以下US)が有用である可能性を報告してきた.US でACNES と診断した1例を報告する.症例は40歳台,女性で約1か月前から食事摂取と関連しない右下腹部痛が出現した.様子を見たが腹痛はNRS(numerical rating scale)8/10程度まで増強し,嘔気も出現したため近医救急外来を受診した.強い腹痛のため入院となり,各種検査(血液検査,造影CT,骨盤・腰椎MRI,上下部消化管内視鏡検査など)が行われたが明らかな原因を指摘されなかった.機能性ディスペプシア(functional dyspepsia: FD)や胃食道逆流症(gastro esophageal reflux disease: GERD)として内服治療が開始されたが改善せず当院紹介受診した.当院でのUS では,疼痛部位は右下腹部の腹直筋内に穿通動脈が描出される狭い範囲に一致していた.US 時に行ったCarnett’s sign およびpinch test は陽性であり,その他の腹部臓器に症状の原因を指摘しなかった.US 所見からACNES と診断し,疼痛部位に1% リドカインの局注が行われて以降,腹痛は消失した.ACNES は決して稀な疾患ではなく,適切な診断を行うことが重要であり,US はその診断に有用である.
著者名
武家尾 恵美子, 他
49
19-27
DOI
10.11482/KMJ-J202349019
掲載日
2023.7.6

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