Online edition:ISSN 2758-089X
術前から副甲状腺癌を疑い手術を施行した原発性副甲状腺機能亢進症の1例
副甲状腺癌は臨床頻度が少なく穿刺吸引細胞診も禁忌とされている事から術前診断に苦慮する場合がある.今回,臨床所見から術前診断時に副甲状腺癌による原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)を疑って手術を行った症例を経験したので報告する.症例は73歳女性.発熱と熱中症のような全身倦怠感にて前医受診.採血検査にてCa 14.0 mg/dL. intact PTH 748.と上昇あり当院糖尿病内分泌内科紹介受診.当院受診時採血検査では,intact PTH 896 pg/mL, Alb 3.8 g/dL, IP 2.1 mg/dL, Ca 14.1 mg/dL. PHPT の診断にて当科紹介受診.頸部超音波検査(US)で左下副甲状腺は辺縁不整,内部粗造,一部に嚢胞様構造を伴い,内部血流の増多を認めるとともに,17.6×27.7×32.4 ㎜と著明に腫大していた. その他の副甲状腺には腫大を認めなかった.99mTc-MIBI シンチグラフィでは,上縦隔に認める腫瘤に一致し強い集積亢進があり,頸部造影CT では縦隔上部に内部LDA を伴う腫瘤性病変を認め,周囲組織や血管と接しているが,明らかな浸潤は指摘できなかった.血清Ca 値の異常高値と辺縁不整で一部被膜外へ突出するUS 所見から,副甲状腺癌を疑い手術を勧め左下副甲状腺摘出術を行った.術後病理組織検査で,腫瘍成分が線維性被膜内に浸潤する像や,被膜外に浸潤傾向を示す部位があり,部位によっては明らかに結節外に進展していると認識できる成分もみられ被膜浸潤と認識できる病変があり,副甲状腺癌の診断であった.原発性副甲状腺機能亢進症における副甲状腺癌の発生頻度は低いが,根治を図る上でも初回手術時に周囲組織を含めたen bloc 切除を行う必要があり,術前診断の時点で副甲状腺癌の診断基準を考慮し的確に診断する事が重要であると考える.
- 著者名
- 小池 良和, 他
- 巻
- 49
- 号
- 頁
- 29-35
- DOI
- 10.11482/KMJ-J202349029
- 掲載日
- 2023.12.21