h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

内視鏡的粘膜下層剥離術で切除し得た低分化型Barrett’s 食道腺癌の1例

緒言:本邦におけるBarrett食道腺癌(Barrett’s adenocarcinoma; BAC)は食道癌のうち7.1%とされ稀である.その組織型は,深達度が深くなるにつれて低分化・未分化癌を認める割合が増加するとされるものの,深達度が 粘膜固有層(lamina propria mucosae; LPM)までの症例で低分化~未分化癌を認めた症例の報告はない.今回,内視鏡で治療し得た低分化BAC の1例を報告する. 症例:60歳台後半,女性.逆流性食道炎に対し,1回 / 年の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy: EGD)による経過観察が行われていた.定期検査のEGD でBarrett’s 食道(Barrett’s esophagus: BE)領域内に径10 mm の陥凹性病変を認めた.生検でsignetring cell carcinoma が検出され,紹介受診した.当院でのEGD で,BE 領域内,右側前壁に10 mm の白色調の陥凹性病変を認めた.狭帯域光観察(narrow band imaging: NBI)を用いた観察では,未分化癌に矛盾しない所見であった.癌の粘膜下層深部浸潤を疑う所見に乏しく,内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)の方針となった.病理組織学的検索の結果,病変部は低分化癌が主体で,印環細胞癌も混在しており,深達度はLPM と判断した.検索範囲の脈管およびリンパ管に浸潤を認めず,治癒切除と診断した. 結語:非常にまれな低分化~未分化成分が主体のBAC症例で,ESDにより切除し得た1例を報告した.BE 症例で,発癌リスクを伴う場合は,定期的なEGD がBAC の早期発見に重要である.
著者名
三澤 拓, 他
50
57-64
DOI
10.11482/KMJ-J202450057
掲載日
2024.10.9

b_download